#6 ダークレッド セルビア製ツイード ベーシックジャケット

市で上着を買い、森を抜けて帰る途中、道に迷った。
夕暮れが迫り、谷に降り、丸太に腰を下ろした。
地の底から、金槌のような音が聞こえる。
丸太を転がすと、下にはアナグマの巣のような穴。
覗き込んだ途端、いつの間にか中へ落ちた。
そこは鏡ばかりの地下の部屋だった。
鏡ごとに映るのは、わたしだが、わたしではない。
一つの鏡を瞬きもせず見つめているうちに、
気づけば自分の部屋にいた。
いまでは、アナグマの穴を通って家へ帰る道を知っている。

このジャケットは、19世紀ロシアの季節労働者「オトホードニク」の衣服から着想を得て作られたオールボタンのシングルブレストモデルです。
彼らは都市で働くために故郷の村を離れたが、村社会の一部としての自覚を持ち、都会人とは考えていませんでした。

ノヴィサド（セルビア）で1950年代の復元織機を使って特別に織られた厚手のヴァージンウールツイード生地。ウズベキスタン産のアイボリーホワイト・ウォッシュドコットン裏地。植物性タンニンなめし革ボタン。魔術的な一着。